霊性という言葉の周辺

まず、言葉の整理をしておこうかと思います。


1.日本語の「こころ」「心」


・心(こころ)は非常に多義的・抽象的な概念であり文脈に応じて多様な意味をもつ言葉であり、人間(や生き物)の精神的な作用や、それのもとになるものなどを指し、感情、意志、知識、思いやり、情などを含みつつ指している。


広辞苑を引いてみると、以下のようなものを挙げている。


・人間の精神作用のもとになるもの。

・人間の精神の作用そのもの。

・知識・感情・意思の総体。

・おもわく。

・気持ち。

・思いやり、情け。

・他に 趣き、趣向、意味、物の中心、等。


次に、Spiritualityの元になっているSpiritの意味について検討します。


*spirit

・生命力、精気

・生気、気力

・性分、気性

・心持ち、考え方

・熱情、気迫

・〔死者の〕魂、霊魂

・《キリスト教》の聖霊

・〔超常的な〕幽霊、妖精、お化け、悪魔

・〔ある時代や地域の〕精神、潮流


*soul

・〔人の肉体と対比される〕魂

・人の意識・思考・感情・意思などの能力の源と考えられる無形の実体。

・〔人の死後も存在する〕霊魂・・・多くの宗教で、肉体から分離して存在できると考えられている、人の霊的存在。

・〔心の奥にある〕感情、善悪の判断力

・〔芸術家や作品の〕精神の深み、繊細な感受性

・〔国や国民の〕特質、本質、魂


*heart


・心臓、胸

・〔自分でコントロールできない感情的な〕心、胸の内、気持ち

・思いやりの心、愛情

・興味、関心、勇気

・中心


*mind


・〔思考・感情・記憶などをつかさどる〕心、精神

・〔感情ではない〕知性、判断力

・〔思考の〕注意、集中、専念

・〔物事に対する〕考え方、感じ方、意見

・〔~したいという〕意向、望み、気持ち

・正気、正常[健全]な精神状態[考え方]

・〔個人の〕意識、記憶、思い出

・〔優れた知性を持つ〕人、人間


という風に、日本語では「心」という言葉一つで、色んな意味を含んでいます。


これに対し、英語では、それを細かく分けて捉えている傾向が強いのです。


Spiritualityを「霊性」と訳したのは、そこに「霊魂」という意味があるからで、生きている人、亡くなった人の「霊的な性質」を含んでいるからです。また、生命力、生と死の対比において、生きる力、命の源という意味も無視できません。


スピリチュアリティとカタカナで書いたり、読んだりするのは面倒だと研究仲間で話が持ち上がり、略称を「スピ」にしたのは、2000年代前半の話で、それがいつの間にか江原スピリチュアルなどに飛び火して、今では定着してしまいました。


でも、スピの中には、日本古来からの「霊信仰」があることは間違いないので、名詞として「霊性」で良いではないかと考えています。


形容詞形の「スピリチュアル」が名詞のように使われるのは、日本だけです。語法がそもそも間違っています。


Soulにも肉体に対する霊魂の意味があって、Spiritとほぼ同じような意味です。

Heartは、心の働きの中でも感情的な側面、Mindは、理性的な側面を表すことが分かると思います。


また、スピには「宗教性」と密接な関係もあり、宗教=Religionという名詞の代わりに、広い意味での宗教性を意味するように使われるようになったのです。


一神教の神、キリスト教やイスラム教などがそうですが、特定の宗教というものをReligionは連想させるので、もっと幅広く宗教性や宗教意識を含んだ言葉として、「スピ」を使うようになっていったのです。


日本の学術的な分野では、「霊魂」や「宗教」という意味をできるだけ排除しようとする傾向が強く、医療、教育、福祉分野などでも「霊性」、「宗教性」という言葉を嫌う傾向がありますが、それは言葉を正しく理解せずに、すり替えようとした部分は否定できません。


霊性を「霊」「魂」という意味で使うことは間違っているとは言えません。


言葉は言霊だと思います。カタカナ外来語ではなく、できるだけ大和言葉で本来の意味を失わないようにしていきたいものです。


正しく言葉を使うように心がけながら霊性に対する探求心を抱き続けていきたいと思います。


秦霊性心理研究所

麗月相談室

麗月相談室は、東洋の霊的伝統と西洋心理学を融合し、心と魂の成長を支援する相談室です。 霊性・意識・呪術・シャーマニズムなどのテーマを扱い、相談活動や加持祈祷を通じて実践的なサポートを提供します。 また、麗月による相談をはじめ、霊的現象や運気に関するアドバイス、評論活動も行っています。